8月31日、百草ふれあいサロンにて「美味しい旅」を考えるワークショップ「もぐさ dining & workshop」が開催されました。
参加者は60歳以上の方20名。まずはお昼に参加者全員で美味しいご飯を食べ、その後にみんなが旅先で食べてみたい、体験してみたいと思った料理や体験を軸に「旅行プラン」を考えていくという内容です。
このワークショップは、森玲奈さん(帝京大学高等教育開発センター講師)が、スウェーデンの高齢者施設において聞いたとある学習プログラムにインスパイアされたものだそうです。その学習プログラムは、高齢の方々がスタッフと一緒にミラノ旅行を企画し、実際に一緒にでかけたというものだそうです。ミラノに行ったことがある人はそれを思い出しながら、そうでない人は想像をふくらませながら、協働し計画を立てていったというエピソードに、森さんは「旅」と「学び」を結びつけることの可能性を改めて強く感じたそうです。
森さんは帰国後、視察で聞いた話を中西紹一さん(有限会社プラス・サーキュレーション・ジャパン代表、立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科特任准教授)にし、美味しいご飯をケータリングしてくださるフリーランスの料理家である大塩あゆみさんもお誘いして、今回のワークショップ実践に至りました。
まずは食事タイムです。大塩さんが作った料理をみんなで取り分け、仲良く頂きます。
大塩さんはいつも農家さんから直接食材を送ってもらい、送られてきた野菜を見てからその日の料理をつくるそうです。
そして本日の料理のコンセプトは、ずばり「見た目で味が想像できるんだけど、本当はちょっと違う料理」 。
参加者に馴染みのある胡麻和えや鯖の南蛮漬け、雞の味噌焼きなどを用意して頂きましたが、料理に少しだけハーブを入れて、いつもとは少しだけ違った調理方法をして頂きました。
実際に食べてみるとヘルシーで本当に美味しく、食事の後も口の中で優しい後味がいつまでも残っている不思議な感覚を味わうことができました。
参加者の皆さんもとても喜ばれており、食後の大塩さんへの質問タイムでは非常に沢山の質問や感想が飛び交っていました。
食事の後は、中西さんのファシリテートで「美味しい旅」の企画を考えます。
旅のプランをつくる前に、まずは参加者同士、過去に体験してきた「美味しかった思い出」について語り合います。
テーブルでは、まずお互いが体験したことのある旅行の話から、徐々にその当時食べた食材や料理の話へと話題が移っていきました。
『伊豆に行ったときの伊勢海老や海の幸がとても美味しかった』
『山形県の民宿に泊まった時に食べたお米が美味しすぎて沢山御代わりしてしまった』
『会津若松で疎開の時に食べたイナゴが忘れられなくて、今でも高幡不動で買っている』
『昔食べた岩手のぶちょうほうもち(中から餡子が出てくるお菓子)がどうしても忘れない』
『小さかった頃に毎朝食べていた獲りたてのアサリの味が忘れられない』
など、参加者の方々が語られる「美味しい思い出」はとても具体的で、その時の情景がこちら側にも伝わってくるくらい、感情の込もったお話を沢山聞くことができました。
美味しい思い出を語り合った後は、ついに待ちに待った旅プランを考えます。
沢山出てきた話の中から、「私これ体験してみたい!」という思い出をもとにして、「美味しい旅プラン」をみんなでつくっていきます。
最終発表では、海と山の2プラン用意されている「イケメン2〜3人で行く、隠れ家的宿&温泉ツアー(1泊2日)」や、東日本大震災が起きた東北の応援に行く「食べて応援ツアー」、近場過ぎて普段はなかなか行くタイミングが来ない「檜原ティータイムツアー(日帰りツアー)」など、個性豊かな旅プランがそれぞれ発表されました。
個人的に印象に残っているのは、
『日帰りだと疲れるので1泊で行きたい』
『料理は多すぎると食べきれないので控えめがいい』
『出来れば自分で釣った魚を食べたい。年齢的に無理な人は見ていればいい』
『年齢的に被災地でボランティアをするほどの元気はないが、どうにかして現地の出向き何かしらのかたちでお金を落とし、向こうの方々と交流したい』
など、通常の旅プランでは見落とされてしまう、その年齢の方々ならではという視点や工夫が入ったアイデアが非常に多かったことです。
ファシリテーターの中西さんも、「高齢者が議論してアイデアなんて出るのか!?と最初は疑問に思っていましたが、話し始めるとアイデアが次々に出てきて驚きました。むしろ、自分の知らない話が沢山出てきて終始皆さんに圧倒されていました。」と最後の感想で話されていました。
私自身、高齢者の方々と共にワークショップをやるからこそ見えてくる新たな発見や気づきというものが、本当はもっと沢山あるのではないか?と、今後の発展の可能性を非常に強く感じたワークショップでした。 中西さん、大塩さん、お集まり頂いた参加者の皆さま、どうもありがとうございました。
〔アシスタント:和泉裕之〕