ラーニングフルエイジング プロジェクト - 高齢化社会に向けた学びの可能性

ワークショップ
開催日:2015年11月21日、28日、12月5日

ライフロングアカデミー

201511月に帝京ライフロングアカデミー秋期公開講座として、帝京大学高等教育開発センターの森玲奈先生が担当される「ワークショップデザイン入門-創りながら学ぶ、新しい学習のスタイル-」が開催されました。

今回の公開講座では、ゲストにNPO法人演劇百貨店の柏木陽さんと青山公美嘉さんをお招きし、全3回の講座を通して「小さなお芝居をつくる」ワークショップを行いました。

講座のタイトルはワークショップデザイン入門ですが、まずは受講者自身にワークショップを体験して頂き、その経験を通してワークショップがどのような構造でデザインされているのかをメタ的に学習してもらうという意図のもと、今回の講座は開催されました。

 

お芝居の舞台は、リアルな博物館

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講座に集ったのは、好奇心旺盛な大学生、ミシン企業に勤めるOLさん、市民講座の常連でもある学校の先生、小難しい話が苦手なお母さん、高齢者サロンを運営する元気なご婦人など。

普段の生活では決して出会うはずもなかった、個性豊かな約10名の参加者たち。

舞台は、帝京大学構内に新しくできた博物館のエントランス。

この場所を使って、公開講座の最終日に小さな小さな発表会を行いました。

時間は一芝居、約5分。登場人物は3、4名。

客席には自分たち以外だれもいない。

それでも開始の幕が上がったその瞬間、そこにはたしかに「物語」がありました。

 

渡されたのは、セリフのない台本

写真2

皆さんは「お芝居をつくる」と聴くと、何を思い浮かべますか?

眩しいスポットライトが当たる舞台、役に合わせた様々な舞台衣装、セリフがびっしり書かれた分厚い台本、そのセリフが空で言えるようになるまで繰り返される稽古…などなど。

色々なイメージがあると思います。ちなみに自分の中でのお芝居のイメージは、「ちょっと難しそうで、ちゃんとできるか不安な、少し恥ずかしさを伴う活動」だったのですが、この講座で触れたお芝居のそれは、今までのものとは少し異なるものだったのです。

2日目のシナリオづくりの際ゲストの柏木さんから渡された台本には、一言もセリフが書いてありませんでした。そのかわり書かれていたのは、登場人物が舞台に出入りする順番。たったそれだけ。

 

舞台の上では、理由のないセリフや登場人物は存在できない

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登場人物が舞台に出入りする順番のみが書かれた台本を頼りに、お芝居をつくり始めた参加者たち。最初は「本当にこんな情報だけで素人の彼らがお芝居なんてつくれるのか?」と疑問でした。ですがシナリオづくりが進むにつれ、その不安が杞憂であったことが徐々に証明されていきます。

「人の出入り」から連想できるシーンをいくつか出してみて、実際に動いてみる。そして動きながら、自然と出てきた言葉がセリフになる。それらのシーンをつなぎ合わせてみて、流れに違和感がある箇所は修正し、1つの物語の輪郭を徐々に浮かび上がらせていく。そんな作業の繰り返しでした。

その過程で柏木さんから、印象に残るいくつかのアドバイスを頂きました。

「自分の役を決めるとき、今回は性別と年齢は偽らないこと。等身大を演じること。」

「その役がそのシーンで登場する理由、その行動をする理由、そのセリフを喋る理由を、ちゃんと用意してあげること。じゃないとその登場人物は、その場にいられなくなってしまうから。」

「すべての設定を説明調で語り過ぎない。多くを語らず、セリフ一言に多くの意味を込める。観客側の想像が勝手に膨らんでいくような、意味のある余白をつくる。」

その他にも、歩くスピードや話すスピード、目線や口調、姿勢や身体の向きについてなど多くのアドバイスを頂きましたが、「演劇の世界ではそれはNGで、これはOKなんだ」という新たな気づきが沢山得られた3日間でした。

 

おわりに

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3日目の発表会を終えた後、私たちの中には確かな達成感と、みんなで1つの舞台を共に創り上げた一体感が漂っていました。

共にした時間は決して多くはありませんでしたが、それでもあの体験を通して感じたことや気づいたことは、そう簡単に忘れることはないでしょう。

そんな価値を創造できるワークショップの可能性を強く実感した3日間でした。

柏木さん、お集まり頂いた参加者の皆さま、どうもありがとうございました。


本ワークショップは、JST-RISTEX「持続可能な多世代共創社会のデザイン」研究開発領域平成27年度採択プロジェクト企画調査「多世代で共に創る学習プログラム開発の検討」(研究代表者:森 玲奈 帝京大学高等教育開発センター 講師)の一環として開催しました。

和泉ワークショップデザイン事務所:和泉裕之】