12月14日(月)に開催された第3回ブックカフェテラチ「出世を誘う、江戸幕府」。今回は山本英貴先生をお招きし、『旗本・御家人の就職事情』(2015 吉川弘文館)を読み解くために三つのワークを行いました。
武士の給与には、基本給と職務手当の二種類あります。基本給でもらえる金額は変化しませんが、時代とともに物価は上がり、貧困する武士が増えました。そこで幕臣たちは職務手当に目をつけました。こうして就職を狙う幕臣が増えたのですが、職の量は増えません。さらに他藩から将軍になった綱吉・家宣・吉宗が江戸城に入る事で家臣の数は急増し、就職できない武士が増えました。これが本書のバックグラウンドです。
武士の就職をチェインで理解
つぎは先生の講義を元に、「情報のマップ」をつくるワークを体験しました。
( 物価の上昇 )
↓
( 困窮する )
↓
( 就活に励む )
↓
( 人脈をつくる )
情報群に一定の流れを生み出して、マップを作ることがルールです。こうすることで物事の因果関係が見える化され、就職事情の大筋が整理されました。これは応用範囲が広く、仕事のフロー図や年表の作成にも活用できます。
未知の視点を向ける
今年を締めくくるテラチのワークは、未知探しゲーム。情報のマップをヒントに、自分たちがまだ知らない情報を見つける宝探しのようなゲームです。既知から未知への視点の切り替えを体験してもらいました。生まれたクエスチョンはこちら。
・武士の基本給と役料はどのような割合なのか?
・本当に役料を設けただけで武士は働いていたのだろうか?
・幕臣たちは何歳から何歳まで働いていたのか?
参加者の問いに山本先生が答えることで、幕府の人事システムが少しずつ明らかになりました。武士の就職事情を読み解くテラチ、いかがでしたでしょうか。次回は新年1月25日です。みなさまのご来店、お待ちしております。
「ブックカフェ テラチ」は、毎月一回九十分だけ開店する見世(みせ)でありながら、そのときの時候や時事に合わせてお選びした本と、そこから生まれる会話を楽しむ催しでございます。一冊の本を存分に味わって頂くために、当店では『講義』と『談義』の二種のプログラムをご用意致しました。
前半の『講義』では、大学教員をゲストに招いた三十分のトークライブを行い、一冊の本を読み解きます。後半の『談義』では、トークの内容を深め、新しい理解を進めるために、参加者の皆様と言葉を交えます。聴くもよし、話すもよし、「テラチ」では会話が向かおうとする『その道中』をお楽しみください。
実をいいますと、てらちの『ち』は道を意味する言葉です。古代日本語において『ち(路)』という言葉は、みち(道)を意味しておりました。てらちには『照らす道』という意味を込め、この店名を名づけました。道草が太陽に照らされ萌え出ずるように、一冊の本から芽吹く会話をお楽しみ頂ければ幸いです。
〔主催:帝京大学文学部4年山田淳史〕
本ワークショップは、JST-RISTEX「持続可能な多世代共創社会のデザイン」研究開発領域 平成27年度採択プロジェクト企画調査「