ラーニングフルエイジング プロジェクト - 高齢化社会に向けた学びの可能性

リファレンス

【文献紹介】⑪「地域包括ケアのすすめ」

【文献紹介】⑪ 東京大学高齢社会総合研究機構編(2014)「地域包括ケアのすすめ」東京大学出版会

 東京大学高齢社会総合研究機構は、研究の基本理念に「Aging in Place」を掲げ、住み慣れたところで自分らしく老いることができる社会の実現をめざし、ジェロントロジーの立場から総合的な研究を行う組織です。本書は、同機構が柏市豊四季台団地で実践する「柏プロジェクト」における「在宅医療を含む地域包括ケアシステム」の約5年間取り組みについてとりまとめたものです。

 「地域包括ケアシステム」とは、2011年度の介護保険制度の改正で打ち出されたものです。高齢者が住み慣れた地域で、安心してその人らしい生活を継続するため、「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の5つの機能について、高齢者のニーズや状態の変化に応じて、切れ目なく必要なサービスを提供することをめざすものです。本書では、地域包括ケアシステムの最大の課題として在宅医療に着目しています。柏プロジェクトでは、地域医療拠点「柏地域医療連携センター」を整備することにより、市役所、医師会等が連携し最新の情報通信技術(ICT)や研修プログラムを活用して在宅医療を推進しています。

 地域包括ケアシステムを実現させるために必要なものの1つとして、多職種連携が挙げられています。本書では、柏プロジェクトにおいて、地域住民、市役所、医師会をはじめとする医療介護関係者など、様々な立場の人々が協働を進めていくプロセスが詳細に描かれています。都市部の急速な高齢化は、現在の日本社会の重要な課題です。近い将来、都市部が直面する課題解決のために活用できる要素が本書にはあふれています。


<目次>

はじめに(辻哲夫)

第Ⅰ編 在宅医療の現状と課題

 第1章 在宅医療を含めた地域包括ケアシステムの必要性(飯島勝矢)

 第2章 在宅医療の基本的な考え方(飯島勝矢)

 第3章 在宅医療推進に向けたわが国の政策動向(久保眞人)

第Ⅱ編 柏プロジェクトからみる地域包括ケア政策

 第4章 在宅医療の仕組みづくり(第1節・第5節:辻哲夫、第2節・第3節・第5節:久保眞人、第4節:後藤純)

 第5章 多職種連携の土台づくり:2つの取り組み(第1節:吉江悟・土屋瑠見子、第2節:後藤純)

 第6章 在宅医療普及のためのシステムの提案(第1節:久保眞人、第2節:木全真理、第3節:山本拓真、第4節:後藤純)

 第7章 在宅サービス拠点と連携した住まいのモデル的拠点の整備(廣瀬雄一)

第Ⅲ編 今後のさらなる展開

 第8章 柏プロジェクトのさらなる展開(第1節:吉江悟、第2節:飯島勝矢、第3節:山本拓真、第4節:廣瀬雄一)

おわりに(辻哲夫)

〔文責:園部友里恵〕