ラーニングフルエイジング プロジェクト - 高齢化社会に向けた学びの可能性

リファレンス

【文献紹介】⑦「シルバーICT革命が超高齢社会を救う」

【文献紹介】⑦ 小尾敏夫・岩﨑尚子(2011)「シルバーICT革命が超高齢社会を救う」毎日新聞社

 第1章では、「災害で最も多くの死傷者となるのは高齢者であるという現実」に着目し、災害時、災害後におけるICT(情報通信技術)の果たす役割について考察されています。2011年の東日本大震災において、安否確認や災害情報の取得に携帯電話やスマートフォンが利用される他、ツイッター等のソーシャル・メディアが積極的に活用されました。著者は、このようなツールが「人々の“ライフライン”」としての役割を果たしつつある一方で、ICT機器を使える者と使えない者の格差「デジタル・デバイド」の問題にも着目します。「情報弱者」である高齢者は「災害弱者」にもなりがちです。こうしたことを背景に、「高齢者と若者が共存できる新しいICT社会をつくることが、超高齢社会日本の新しい未来を形づくる第一歩となるだろう」と筆者は述べています。

 そして、続く第2章・第3章では、著者が行った国内外の視察調査や国際会議への参加をもとに、超高齢社会におけるICT利活用の事例が多数紹介されています。また、今後巨大なマーケットとなることが予想される高齢者ビジネスについて、企業や自治体の取り組みの調査についても報告されています。

 最後の第4章では、「超高齢社会を乗り切るためにICTが果たすべき役割」として、36の提言が示されています。

 本書でも指摘されるように、「高齢者」といってもその年代によってICT機器に触れてきた経験も大きく異なります。例えば、60代は、高齢期を迎えるまでにICT機器を利用してきており、携帯電話やパソコン、インターネットを利用できる人々も多くいます。しかし技術革新のスピードも非常に速く、次々に新たな技術や機器が生み出されてきています。利活用する人々の状況、技術革新の状況の双方がバランスをとり、より良いICT社会をつくるためのヒントが本書にはあふれています。


<章構成>

第1章 東日本大震災と高齢者

第2章 世界一の「超高齢社会」日本

第3章 世界のシルバーICT革命

第4章 36の提言

〔文責:園部友里恵〕