ラーニングフルエイジング プロジェクト - 高齢化社会に向けた学びの可能性

リファレンス

【文献紹介】⑥「介護に役立つ共想法:認知症の予防と回復のための新しいコミュニケーション」

【文献紹介】⑥ 大武美保子(2012)「介護に役立つ共想法:認知症の予防と回復のための新しいコミュニケーション」中央法規

 共想法とは、「身の回りにあって気をつけていないと見逃してしまうような、さりげなく面白いものごとに気づき、写真に撮り、その写真を持ち寄って語り合う、ほのぼのとした日常会話を支援し、コミュニケーションを促す手法」です。2006年、認知症の祖母を持つ著者によって考案されました。認知症予防に有効とされる認知活動(体験記憶、注意分割、計画)を支援することを通じ、認知症予防回復につなげることが目指されています。

 本書は、日常会話は難しいものであると捉えるところから出発しています。そして、日常会話の難しさを、①聞くことと話すことのバランスをとること、②相手の考えや気持ちを読み取り理解すること、③自分の考えや気持ちを理解し伝えること、④会話をする雰囲気をつくること、に整理しています。こうした日常のコミュニケーションの難しさをおもしろさへと変えるのが、共想法という手法です。

 共想法の特徴の1つとして、写真の活用を挙げることができます。筆者は、話し手の気持ちと記憶をよみがえらせるもの、聞き手の想像力をかきたてるものとして写真を捉えています。そして、認知症高齢者とコミュニケーションをとる際にも写真は有効であると述べられています。

 また、「話す」ことよりも「聞く」ことが中心とされているのも共想法の特徴です。共想法では、同じものを見ても違って見えることがあるということが前提とされ、相手の視点に立つ、もしくは、相手になりきって世界を見ることが目指されています。

 本書は、主な読者層として介護職を想定していることもあり、全国各地における実践の際に実際に用いられた写真やそのときの話題についても多数掲載されている他、共想法を行う上でのポイントについてもわかりやすく解説されています。もちろん介護職のみならず、コミュニケーションについて考えたい人にとっても日常で活かせるたくさんのヒントを与えてくれる1冊です。


<目次>

第1部 コミュニケーションを面白くするコツ

第1章 日常会話の難しさ

第2章 聞くことと話すことのバランスをとる

第3章 聞く力をつける

第4章 話す力をつける

第5章 交流する場をつくる

第2部 「むずかしい」を「面白い」に変える共想法

第6章 共想法とは何か

第7章 共想法を準備し実施する

第8章 共想法を活用する

〔文責:園部友里恵〕