【文献紹介】⑮ 前田信彦(2006)「アクティブ・エイジングの社会学:高齢者・仕事・ネットワーク」ミネルヴァ書房
本書の目的は、日本における高齢期の働き方や就業意識、社会的ネットワークの実態を分析し、社会学的視点から高齢期の職業生活の諸相を明らかにすることです。高齢者といってもその健康状態やライフスタイルは多様であること、高齢者の形成するパーソナル・コミュニティがQOLと密接なつながりを持つこと等が明らかにされ、自らも社会の担い手・支え手となるという視点で高齢者を捉える「アクティブ・エイジング」という概念が、政策的視点においても重要になるという示唆が導かれています。
健康寿命が伸び続ける日本においては、退職後にも長い人生が待ち受けており、高齢期の職業キャリアを考えるという新たな課題が生まれています。本書は、多様性を担保しながらより良い形で社会と関わることのできる高齢期の生き方を支える仕組みをつくる上での示唆に富んでいます。
<目次>
序章 アクティブ・エイジングのアプローチ
Ⅰ 職業キャリアとアクティブ・エイジング
第1章 高齢期の職業観とアクティブ・エイジング
第2章 高齢期への移行と生活設計
第3章 高齢期の職業キャリアとアンペイド・ワーク
第4章 高齢期の職業キャリアと生活の質
第5章 欧州における高齢化とライフコース政策の試み
付論1 男性の労働時間と家庭生活:労働時間の再編成に向けて
Ⅱ 社会的ネットワークとアクティブ・エイジング
第6章 高齢期の社会的ネットワーク
第7章 高齢期の社会的ネットワークの事例分析
第8章 高齢期の社会的ネットワークと生活の質
第9章 高齢期の社会的ネットワークと住環境
終章 アクティブ・エイジング社会の構築へ
付論2 少子高齢社会における世代間関係と家族政策
〔文責:園部友里恵〕