【文献紹介】⑰ 島薗進・竹内整一編(2008)「死生学とは何か」(死生学1)東京大学出版会
本書では、日本における死生学の展開の歴史と課題が概観される他、生命倫理、安楽死・尊厳死に作動する生権力、時間、死への怯え、自分の死などをキーワードに、多様な角度から死あるいは死生観について論じられています。また、『死ぬ瞬間』の著者として有名なエリザベス・キューブラー・ロスの思想、アメリカの死生観教育やイギリスの死生学など、死生学がいちはやく発展し日本にも大きな影響を与えたとされるアメリカやイギリスの研究・実践の歴史と現状についても述べられています。
死に向き合うことは、医療関係者や教育者、宗教家などの専門家だけでなく私たち1人1人が取り組まざるを得ない課題です。「いかに死ぬか」を考えることは決してネガティヴではなく、希望を生み出す可能性があることを感じさせてくれる1冊です。
<目次>
はじめに(島薗進・竹内整一)
1章 死生学とは何か:日本での形成過程を顧みて(島薗進)
2章 死生学と生命倫理:「よい死」をめぐる言説を中心に(安藤泰至)
3章 生権力と死をめぐる言説(大谷いづみ)
4章 アメリカの死生観教育:その歴史と意義(カール・ベッカー)
5章 英国における死生学の展開:回顧と現状(グレニス・ハワース)
6章 生と死の時間:〈深層の時間〉への旅(広井良典)
7章 なぜ人は死に怯えるのだろうか(芹沢俊介)
8章 エリザベス・キューブラー・ロス:その生と死が意味すること。(田口ランディ)
9章 「自分の死」を死ぬとは(大井玄)
10章 死の臨床と死生観(竹内整一)
〔文責:園部友里恵〕