【文献紹介】㉑ 鷲田清一(2015)「老いの空白」岩波現代文庫
本書は、〈老い〉が「問題」としてしか論じられていないことが問題なのではないかという指摘から始まります。著者は、ひとは、〈老い〉とともに、「できない」こと・「できなかった」ことから人生を見据えるようになると述べます。そして、精神障害者らのグループホーム・共同作業所「浦河べてるの家」の取り組みや芹沢俊介の「する」ことと「ある」ことの対比などに触れながら、ひとの「ある」が生み出される「受けとめ手」との「小さな関係」に着目します。
急速なスピードで高齢化の進む日本では、次々に「問題」としての〈老い〉が浮上し続けています。本書は、そうした中で、一度立ち止まって老いの意味を考えることの重要性を教えてくれるのみならず、ただ「ある」ことが認められるという人間関係がいかに豊かなものであるかを感じさせてくれます。
<目次>
はじめに
1 〈老い〉はほんとうに「問題」なのか?
2 できなくなるということ
3 〈老い〉の時間:見えない〈成熟〉のかたち
4 〈弱さ〉に従う自由
5 ホモ・パティエンス:べてるの家の試み
6 肯定と否定のはざまで
7 「いるだけでいい」「いつ死んでもいい」と言い切れるとき
エピローグ 一枚のピクチュアへ
あとがき
〔文責:園部友里恵〕